義務化はいつ決定したのか?

改正食品衛生法が2018年6月13日(水)に公布され、この法律によりHACCPが義務化されることとなりました。

そもそも「食品衛生法」とは“食品衛生上の危害を防止し、国民の健康を保護すること”を目的に1947年12月に施行された法律です。その後時代の経過とともに何度も改正が行われてきましたが、今年(2018年)もまた食を取り巻く環境の変化や国際化などに対応するため改正が行われました。

では、今回の改正が行われる背景をもう少し詳しく見ていきたいと思います。

 今回の改正は前回の改正から15年が経過しています。この年月の中で、日本の世帯構造は大家族から核家族へと変化していきました。それに伴い、調理食品、外食・中食への需要の増加や輸入食品の増加など食のグローバル化が急速に進んでいます。さらには、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催や食品の輸出促進を見据え、国際標準と整合的な食品衛生管理が求められるようになりました。

 このような背景を受けて、2016年厚生労働省医薬・生活衛生局において「食品衛生管理の国際標準化に関する検討会」が立ち上げられ、専門家による討議や事業者団体へのヒアリングを経て、2016年 12月26日HACCPによる衛生管理の制度化の提言がとりまとめられました。

 そして、「食品衛生法等の一部を改正する法律案」が2018年3月13日に参議院議案に受理され1か月後に可決、さらに同年6月7日に衆議院審議においても全会一致で可決となり、6月13日に公布されたことでHACCPが正式に義務化されることとなりました。

改正食品衛生法とHACCP義務化の関係とは?

「食品衛生法等の一部を改正する法律案」の概要は以下の7つの項目です。

1. 広域的な食中毒事案への対策強化
2. HACCPに沿った衛生管理の制度化
3. 特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の収集
4. 国際整合的な食品用器具・容器包装の衛生規制の整備
5. 営業許可制度の見直し、営業届出制度の創設
6. 食品リコール情報の報告制度の創設
7. その他(乳製品・水産食品の衛生証明書の添付等の輸入要件化、自治体等の食品輸出関係事務に係る規定の創設等)

この中でHACCPの義務化を定めているのが2つ目の項目です。そして実際の条文が下記になります。

改正食品衛生法第50条の2

 厚生労働大臣は、営業(略)の施設の衛生的な管理その他公衆衛生上必要な措置(以下この条において「公衆衛生上必要な措置」という。)について、厚生労働省令で、次に掲げる事項に関する基準を定めるものとする。

一 施設の内外の清潔保持、ねずみ及び昆虫の駆除その他一般的な衛生管理に関すること。

二 食品衛生上の危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理するための取組(小規模な営業者(略)その他政令で定める営業者にあっては、その取扱う食品の特性に応じた取組)に関すること。

第2項 営業者は、前項の規定により定められた基準に従い、厚生労働省令で定めるところにより公衆衛生上必要な措置を定め、これを遵守しなければならない。

 ここで、改正食品衛生法が定める「HACCPに沿った衛生管理の制度化」には対象事業者の違いにより2種類の管理レベルがあることを説明しておきたいと思います。
 まず一つ目は、コーデックスのHACCP7原則を要件とする“基準A”です。基準Aの対象は、大規模事業者・と畜場・食鳥処理場です。 二つ目は、HACCP の考え方に基づく衛生管理を要件とする“基準 B”です。基準Bの対象は小規模事業者・お弁当などの多種類の食品を扱う事業者・小売販売業者等です。
 簡単に言うと、基準A=「HACCPをフルスペックで実施してください。」、基準B=「HACCPの考え方(基準、手順を決める。記録を残すなど)を取り入れた上で、衛生管理に努めてください。」という違いです。

上記条文中において、「食品衛生上の危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理するための取組」が基準Aを指し、「その取扱う食品の特性に応じた取組」が基準Bを指しています。

義務化となるのはいつから?

2018年6月13日に公布された改正食品衛生法ですがまだ実際に効力を持っているわけではありません。「公布」というのは、国会で制定した法律を一般国民に周知することであり、法律の効力が現実的に発動し、作用するのは「施行」が行われた後になります。

では、改正食品衛生法がいつ「施行」されるのかということですが、法令の付随的な事項を定めた附則には以下のように記されています。

附則第1条
 この法律は、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。(以下省略)

附則第5条
 新食品衛生法第50条の2第2項(略)に規定する公衆衛生上必要な措置については、施行日から起算して1年間は、旧食品衛生法第50条第2項の規定により定められた基準によることとする。

 つまり改正食品法は、公布の日(2018年6月13日)から2年以内に施行されます。ただし、HACCPを義務化する項目に関しては、さらに1年間の猶予期間が設けられます。したがって、遅くとも2021年6月までにHACCPの義務化が行われることになります。

いつまでに何をすればよいのか?

改正食品衛生法施行までに3年の猶予があるとはいえ、この3年という数字はあくまで“最長”の場合であり、不確定なものです。そのため、可能な限り早く対応していくべきでしょう。また、衛生管理のシステムを変えるには、環境の整備や人的リソースの確保などが必要となります。このようにHACCP導入の基盤を作るためには莫大な資金を要する場合もあると思います。そのようなときは金融支援を取り決めた「HACCP支援法」を活用するのがいいでしょう。