HACCP認証の全体の流れを確認
HACCP認証にはおよそ10~12か月の期間を要するようです。特に手順書や規定集など書類の作成量が多く、それだけ時間も要します。また、HACCP導入が目的となってしまったのではHACCPは正常に機能しないでしょう。そのため、HACCPの考え方やHACCP導入によりどのようなメリットあるのかを従業員がしっかり理解するための教育・研修は必須と思われます。
以下には12か月のスケジュール例を示したいと思います。
1ヶ月目…【HACCPチームの立ち上げ】
HACCPに取り組むには各現場の担当者を含むHACCPチームを結成します。
また、経営者がHACCPに取り組むことを従業員全員に表明することが大切です。
2ヶ月目…【HACCPの理解】
チームメンバーの教育を行います。HACCPとは何なのか、HACCPの必要性などを全員が理解する必要があります。
3ヶ月目…【PP(一般的衛生プログラム)の検討】
PPはHACCPを運用するための“土台”となります。
HACCPはハザードの発生防止上極めて重要な工程管理に注意を集中させた衛生管理システムです。そのためHACCPのみで食の安全性が担保できるわけではなく、施設設備や使用水・廃棄物の衛生管理などそもそも食品が汚染されない環境づくりをしなければ意味がありません。
4ヶ月目…【SOP(作業標準手順)の作成】
PPを適切に管理していくためにはSOPを文書化しておくことが重要です。従業員が各々の判断・やり方で作業をしていてはPPの管理は到底行えません。SOPを遵守させるためには従業員教育を徹底しなければなりません。
5ヶ月目…【SSOP(衛生標準作業手順書)の作成】
SOPはあらゆる作業の手順であるのに対し、SSOPはどのようにクリーニングやサニテーションをするかの手順です。USDA(米国農務省)では、製品の直接汚染を防止するクリーニングの①方法、②担当者、③頻度を定めることが求められます。
6ヶ月目…【HACCPプランの作成】
製品説明書や原材料リスト、製造工程フロー、施設の図面などから危害分析(HA)を行い、重要管理点(CCP)、管理基準(CL)、改善措置を設定することでHACCPシステムの構築を行います。
7ヶ月目…【記録と保存方法の設定】
HACCPシステムを構築しても実施しなければ意味がありません。実施した証拠として記録をとることで、何か問題が生じた場合に原因を追究するための手助けにもなります。記録フォームや保存方法・保存場所も統一して決めておきましょう。
8ヶ月目…【問題対応マニュアルの作成】
いくら設備を整え、従業員の教育をし、HACCPを導入しても問題が発生する確率が0%とは言い切れません。クレーム処理対応手順書やリコールの手順書等も整備しておく必要があります。
9ヶ月目…【HACCPマニュアルの作成】
ここまででHACCPシステムが構築されましたが、実際に運用していくためには従業員がその内容を理解する必要があります。そのため自社のHACCPマニュアルを作成し、共有し、全従業員でHACCPに取り組みましょう。
10ヶ月目…【MSDS(製品安全データシート)の作成】
MSDSとは化学物質の取り扱い上の注意、人や環境へ与える影響、事故に対する応急処置法を記載した“取扱説明書”のことです。化学物質を含む製品を他の事業者に譲渡または、提供する際に添付します。防腐剤や添加物等適用範囲内である場合はMSDSの作成を行います。
11ヶ月目…【HACCP認定取得(事前審査)】
コンサルティングによる事前審査を受け、指摘事項の改善を行います。
12ヶ月目…【HACCP認証取得(本審査)】
HACCP認証協会による本審査を受け、正式にHACCP認証を取得します。
HACCPの認証機関を確認しましょう
HACCP認証にはいくつかの種類があり、認証団体・審査機関が異なります。
●総合衛生管理製造過程
厚生労働省の認証制度であり、対象製品は缶詰やレトルト食品などの容器包装詰加圧加熱殺菌食品、かまぼこや、はんぺんなどの魚肉練り製品、乳製品、清涼飲料水、食肉製品に限られています。
●民間審査機関による認証
ISO220000やSGSHACCP、FSSC22000など民間のHACCP認証は数多く存在します。民間HACCPの特徴としては、フードチェーン全体を適用範囲としているものや、手引書や事例が存在しない業種や製品が多いということが挙げられます。社内の人材教育や外部コンサルティングなど費用が掛かる可能性、また審査レベルが審査員の力量に左右される可能性があることを理解しておく必要があります。
●地方自治体による認証
地域HACCPは各自治体が独自に定めた基準により審査を行います。対象製品や適用範囲は限定されますが、中小企業でも取得しやすいようです。認証機関は各自治体により指定された機関であることが多いため、まずは自治体のHPを訪ねてみるのが良いと思います。
●業界団体認証
業界団体によるHACCP認証は、適用範囲がその業界・業種に限られています。そのため、HACCP支援法の指定認定機関に登録されている団体(表1)の中から、自社の業種が該当する協会・団体等に確認するのが良いでしょう。
HACCP支援法 指定認定機関
食肉製品 (一社)日本食肉加工協会
東京都渋谷区恵比寿1-5-6
TEL:03-3444-1772
FAX:03-3441-8273
容器包装詰常温流通食品
(公社)日本缶詰びん詰レトルト食品協会
東京都千代田区神田東松下町10-2 (翔和神田ビル3階)
TEL:03-5256-4801
FAX:03-5256-4805
炊飯製品 (公社)日本炊飯協会
東京都豊島区南池袋2-31-5 (南大和ビル8階)
TEL:03-3590-1589
FAX:03-3590-7498
水産加工品 (一社)大日本水産会
東京都港区赤坂1-9-13 (三会堂ビル8階)
TEL:03-3585-6985
FAX:03-3582-2337
乳及び乳製品 (公財)日本乳業技術協会
東京都千代田区九段北1-14-19 (乳業会館)
TEL:03-3264-1921
FAX:03-3264-1569
味噌 全国味噌工業協同組合連合会
東京都中央区新川1-26-19 (全中・全味ビル2階)
TEL:03-3551-7161
FAX:03-3551-7168
醤油製品 全国醤油工業協同組合連合会
東京都中央区日本橋小網町3-11
TEL:03-3666-3286
FAX:03-3667-2216
冷凍食品 (一社)日本冷凍食品協会
東京都中央区築地3-17-9(興和日東ビル4階)
TEL:03-3541-3003
FAX:03-3541-3012
集団給食用食品 (公社)日本給食サービス協会
東京都千代田区神田須田町1-24-3(FORECAST神田須田町 8階)
TEL:03-3254-4614
FAX:03-3254-4667
惣菜 (一社)日本惣菜協会
http://www.nsouzai-kyoukai.or.jp/
東京都千代田区麹町4-5-10 (麹町アネックス6階)
TEL:03-3263-0957
FAX:03-3263-1325
弁当 (一社)日本弁当サービス協会
東京都千代田区神田淡路町2-21-12 (淡路町広瀬ビル3階)
TEL:03-5289-7470
FAX:03-5289-7472
食用加工油脂 (公財)日本食品油脂検査協会
東京都中央区日本橋浜町3-27-8 (日本マーガリン会館内)
TEL:03-3669-6723
FAX:03-3669-1019
ドレッシング類 (一財)日本食品分析センター
東京都渋谷区元代々木町52-1
TEL:03-3469-7132
FAX:03-3469-7002
清涼飲料水 (一社)全国清涼飲料連合会
東京都千代田区神田須田町2-9-2 (PMO神田岩本町ビル2階)
TEL:03-6260-9260
FAX:03-6260-9306
食酢製品 (一財)全国調味料・野菜飲料検査協会
http://www.chouyaken.or.jp/index.html
東京都中央区日本橋小伝馬町15-18(常和小伝馬町ビル3階)
TEL:03-3639-9667
FAX:03-3639-9669
ウスターソース類 (一社)日本ソース工業会
http://www.nippon-sauce.or.jp/index.html
東京都中央区日本橋小伝馬町15-18(常和小伝馬町ビル3階)
TEL:03-3639-9667
FAX:03-3639-9669
菓子製品 全国菓子工業組合連合会
東京都港区南青山5-12-4 (全菓連ビル)
TEL:03-3400-8901
FAX:03-3407-5486
乾めん類 全国乾麺協同組合連合会
東京都中央区日本橋兜町15-6 (製粉会館6階)
TEL:03-3666-7900
FAX:03-3669-7662
農産物漬物 全日本漬物協同組合連合会
http://www.tsukemono-japan.org/
東京都江東区三好1-1-2 (渡辺ビル)
TEL:03-5875-8094
FAX:03-5875-8095
生めん類 全国製麺協同組合連合会
東京都江東区森下3-14-3 (全麺連会館)
TEL:03-3634-2255
FAX:03-3634-1930
大量調理型主食的調理食品
(公社)日本べんとう振興協会####
http://www.bentou-shinkou.or.jp/index.html
東京都中央区日本橋小伝馬町15-15(食糧会館5階)
TEL:03-5643-5611
FAX:03-5643-5612
パン (一社)日本パン技術研究所
東京都江戸川区西葛西6-19-6
TEL:03-3689-7571
FAX:03-3689-7574
食肉 (公財)日本食肉生産技術開発センター
東京都港区赤坂6-13-16(アジミックビル)
TEL:03-5561-0786
FAX:03-5561-0785
精米 (一社)日本精米工業会
東京都中央区日本橋小伝馬町15-15
TEL:03-4334-2190
FAX:03-3249-1835
卵製品 (一社)日本卵業協会
東京都中央区新川2-6-16
TEL:03-3297-5553
FAX:03-3297-5554
認証手続きについての相談先は?
いざHACCPが義務化されたといわれても何をすればいいのかわからない事業者の方も多いと思います。多くの会社がHAACCPに関する研修を開催しているので、まずはそのような研修を受けてHACCPを正しく理解することから始めると良いと思います。そのうえで、実際にHACCPシステムを構築していく際に不明点等あればコンサルティングを依頼するのも一つの手でしょう。一口にコンサルティングといっても対応しているHACCPや料金、支援範囲など様々ですので、自社に合ったコンサルティングを選定することが重要です。
SARAYA サニテーション事業部
https://www.saraya.com/com_profile/jigyo/sanitation.html
食品衛生インストラクターによるHACCP導入支援を実施しています。
株式会社ベック
https://www.bec-qa.co.jp/haccp/
現状分析から、導入に向けたスケジュール作成、書類作成の支援を含めたHACCP導入までのコンサルティングを実施しています。
公益社団法人日本食品衛生協会
http://www.n-shokuei.jp/eisei/haccp.html
HACCPの導入・運用できる人材を育成するための各種研修会を行っている他、HACCPに関する知識を有する“HACCP普及指導員”を派遣しHACCPの構築を支援してくれます。
日本HACCPトレーニングセンター(JHTC)
http://www.jhtc-haccp.org/wsschedule/article/senmonka140911.html
JHTCコンサルティングファームに登録されている様々な分野の専門家の中から業種、地域、専門性に合ったコンサルタントを紹介してくれます。
ロイドレジスタージャパン株式会社
https://lloyds-register.co.jp/
1~2日間の短期集中講習や複数回の訪問型構築支援などクライアントの希望や特徴に沿ったHACCP構築支援を行っています。
株式会社ダイナミック・サニート(秋田県)
http://www.dynamic-snt.co.jp/business/haccp/index.html
県の施策により秋田県HACCP認証取得のコンサルティングを行っており、無料でコンサルティングを受けることができます。
森久保薬品株式会社
http://www.haccp.jp/index.html
関東エリアを中心に畜産農場の農場HACCPの構築・運用の支援を行っています。