HACCP義務化は従わなくてはいけないのか?
2018年6月13日に改正食品衛生法が公布されました。その中で、食品衛生管理システムのHACCPが全食品業者に義務付けられることになりました。
ところが、現在日本でのHACCP導入率は全食品業者の3割程度であり、特に小規模な業者での導入率は2割以下という状況だそうです。このような低取得率ですが、普段生活する中で日本の食品に危機感を覚えた人は少ないのではないでしょうか。つまり、HACCPがなくても日本の食品は安全で高品質であったと思われます。
では、なぜいまHACCPが義務化されたのでしょうか
1993年FAO(国連食糧農業機関)/WHO(世界保健機関)の合同食品規格(コーデックス)委員会が消費者の健康の保護と公正な食品貿易の実施を目的に、「HACCPシステムおよびその適用のためのガイドライン」を発行しました。その後、世界各国でHACCPが導入されていきました。
米国やEUでは全ての食品にHACCPによる衛生管理が義務付けられています。また、東南アジア諸国でも輸出用食品を製造する施設では輸入国の規制と意向に合わせる形で、HACCPシステムを導入するところも増えています。
このようにHACCPの義務化が進む国では、「HACCPを実施していないと輸入しない」というのが常識になりつつあります。つまり、HACCPは国際基準で食品の安全性を保証するものなのです。
一方、食品輸入大国であった日本では輸出のためにわざわざお金や時間をかけてHACCPを導入する必要性があまりありませんでした。しかし、TPPやオリンピックなど日本の食品業界にも国際化の波が押し寄せたことで、厚生労働省もHACCPを義務化しないと日本の食品を輸出できず、世界に遅れを取ってしまうと考え、義務化を実施しました。
HACCP義務化を無視した場合の法的な罰則は?
HACCP義務化を無視、つまり何も対応をしなかった場合については、2019年の1月の時点では特に罰則はありませんが、万一問題が発生してしまい食品衛生法違反となった場合は「3年以下の懲役または300万円以下(法人は1億円以下)の罰金」と罰則も重く、過去にも懲役や罰金の判決が出た事例も散見されます。
法律以外のデメリットは?
HACCPを導入しないデメリットは罰則だけとは限りません。
法律での義務化など国から押し付けられているような感覚もありますが、そもそもHACCPは「食品の品質を確保する」ためのシステムです。つまり、極論を言えば「HACCPを導入していな=自社の食品の品質が悪い」ということになってしまうかもしれません。そうなると、客足が遠ざかり経営状態の悪化を引き起こす事態になるでしょう。
さらに、上記でも述べたように、HACCPはいまや食の安全において世界標準となっています。そのHACCPを取っていないということは、国内の食品事業所にとって将来の海外進出のチャンスを失ってしまうということなのです。